約千年の歴史をもつ日本刀。我が国の世界に誇る伝統美術工芸品です。現在も日本全国にいる刀鍛冶が技を磨き、鉄の美に対する飽くなき探究心を燃やしています。平成の今、美しき日本刀として国内外から高い評価を受ける現代刀ですが、今回弊社の特別展では、明治から昭和の時代にかけて作刀し日本刀を甦らせ、現代刀の礎を築いてきた物故刀匠の展示即売会を開催致します。
天下泰平の江戸時代も幕末の動乱をへて終焉し、武士の世が終わり明治政府による近代国家が誕生しました。これまでは帯刀し実用品であった日本刀も明治九年の廃刀令の施行により、徐々にその需要が減ってきました。幕末まで全国各地で作刀していた刀鍛冶が廃業していくなか、自身が愛刀家でもあった明治天皇により帝室技芸員として刀鍛冶を登用するなど、ごく少数の刀匠の活動により作刀技法が受け継がれ、これにより武器としての役目を終えた日本刀が、日本人の精神的お守りや美術工芸品として生まれ変わりました。その後日清・日露戦争をへて昭和の時代に入り、一般にも日本刀の価値が見直され美術品としての再評価が高まってきます。そうした時流の中、当時の需要とも呼応するようなかたちで、昭和八年に財団法人日本刀鍛錬会が靖国神社境内に発足し、また、政治家だった栗原彦三郎(栗原昭秀)による日本刀鍛錬伝習所が設けられ、刀鍛冶の育成と発展に大いに活躍致しました。
昭和二十年八月の敗戦に伴い、日本刀は武器とみなされ連合国に供出、また作刀の禁止と日本史始まって以来の保存・継承の危機に瀕する事になります。刀剣の所持に対しては講和条約の年の二十六年から登録制度により認められ、作刀は二年後の二十八年に文化財保護委員会(文化庁)の承認制により認められました。こうして戦前から古名刀を目標として研鑚してきた刀匠も、続々と作刀を再開し作品を発表し始めます。しかし、材料の乏しさ・現代刀の市場が確立されていない状況の中で辛酸をなめる日々が続きます。その後、現在に続く若手刀匠の育成や地道な作品発表の活動により、次第に刀匠の数も増え、技術の交流・向上が生まれてきました。新刀や新々刀はおろか、古刀に勝るとも劣らない現代刀の完成度に秘められた道程とは、明治以降一貫して日本刀の復興の為に研究・作刀してきた刀匠の意思が、脈々と受け継がれてきた賜物であり、そうした先人達の貴重な作品を、今回の特別展に於いてご紹介致します。どうぞごゆっくりご観覧下さい。
平成名刀会